年度予算の計画はどのようにたてていますか?
売上〇%必達!
販売管理費△%削減!
などは定番かと思います。
では、ご自分の会社の売上が1%増減したら、営業利益は何%増減するかを理解していますでしょうか?
売上が1%上がったら営業利益は何%上がるか
売上がいくら上積みされても、利益が残らなければ意味がありません。
いや、売上の上昇は運転資金の増加につながりますので、利益の上積みのない売上上昇は危険ですらあります。
利益が重要とはいえ、年度計画を立てる際には売上の目標が必要です。
利益を得るためにどのように行動するかを考える際、
何を(商品)、どこへ(お客様)、どれだけ(数量)、いくら(単価)
で販売するかを考えなければなりません。
売上= 数量 × 単価
ですので、数量と価格(値決め)の計画が必要であり、この要素をシミュレーションしながら売上高の目標を決めていきます。
しかし、肝心なのは利益がどれだけになるかですので、この売上の増減が利益の増減にどう影響するかをあらかじめ知っておく必要があります。
このときに利用するのが「営業レバレッジ」という数値です。
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たとえば営業レバレッジ10倍という会社があるとします。
この場合は、売上が1%上昇したら、営業利益が10% (1%×10倍)上昇することを意味します。
売上が5%上昇したら、営業利益は50%(5%×10倍)上昇することになります。
そして、売上が10%上昇したら、営業利益は100%!
つまり、2倍になるということです。
営業レバレッジの計算方法
営業レバレッジは次の手順で計算します。
1.損益分岐点=固定費÷(1-変動比率)
2.安全余裕率=(売上高−損益分岐点)÷売上高
3.営業レバレッジ=1÷安全余裕率
例)次の損益計算書で確認してみます。

(売上原価は変動費のみ、販売管理費は固定費のみとします。)
①損益分岐点=1,800,000(販売管理費)÷12.5%(売上総利益率)=14,400,000
②安全余裕率=(16,000,000(売上高)−① ) ÷16,000,000(売上高)=10.0%
③営業レバレッジ=1÷②=10(倍)
これにより、営業レバレッジは10倍となりました。
安全余裕率というのは、あと売上がどれくらい減少したら損益分岐点に到達するかを表します。
損益分岐点は、赤字にならないぎりぎりの売上高を意味しますので、安全余裕率10%というのは、あと売上高が10%減少したら営業利益はマイナスになることを意味します。
営業レバレッジはこの安全余裕率の逆数、つまり1÷安全余裕率で計算されます。
この場合には、1÷10%=10
となり、営業レバレッジは10(倍)となります。
これは、売上高の変化率に対して、その10倍の変化率で営業利益は変化するということを意味します。
売上が1%上昇したら、営業利益は10%(1%×10倍)上昇します。
売上が5%上昇したら、営業利益は50% (5%×10倍)上昇します。
売上が10%上昇したら、営業利益は100% (10%×10倍)上昇します。
逆に、売上が減少した場合には、その10倍の率で営業利益は減少します。
売上が10%減少したら、営業利益は100%減少、つまりゼロになります。
これは、安全余裕率10%の意味と同じですね。
安全余裕率が小さい(損益分岐点まで余裕がない)ほど営業レバレッジは大きくなります。
安全余裕率が小さい=営業レバレッジが大きい=売上の変化が大きく利益に影響=リスクが大きい会社
ということになります。
営業レバレッジが大きいほど、営業利益が多くなるわけではない
営業レバレッジの解釈として注意すべきことがあります。
営業レバレッジが大きいほど、売上の変化率に対して営業利益の変化率が大きくなるのだから、営業レバレッジの大きい事業に注力すべきという間違った判断をしないように注意が必要です。
営業レバレッジはあくまでも、売上の変化率と営業利益の変化率の度合いを比較したものであり、少し売上をあげただけでおおきな利益をあげられることを意味するものではありません。
粗利率で考えてみましょう。
粗利率が大きいほど、営業レバレッジは小さくなることが次の手順よりわかります。
1.損益分岐点は、 固定費÷粗利率 で計算されます。
粗利率が大きいほど、損益分岐点は低くなります。
2.損益分岐点が低いほど、安全余裕率は大きくなります。
安全余裕率は、(売上高-損益分岐点)÷売上高 で計算されます。
3.安全余裕率が大きいほど、営業レバレッジは小さくなります。
営業レバレッジは、1÷安全余裕率 で計算されます。
粗利率が大きいほど営業レバレッジは小さくなることがわかりました。
粗利率を大きくすると営業レバレッジが小さくなることを、次で確認してみます。

最初の例では、売上総利益率が12.5%の時は、営業レバレッジ10倍でしたが、売上総利益率を20%にすると、営業レバレッジは2.3倍と小さくなることがわかります。
また、固定費の面から考えてみます。
固定費が小さいほど、営業レバレッジは小さくなることが次の手順よりわかります。
1.損益分岐点は、 固定費÷粗利率 で計算されます。
固定費が小さいほど、損益分岐点は低くなります。
2.損益分岐点が低いほど、安全余裕率は大きくなります。
安全余裕率は、(売上高-損益分岐点)÷売上高 で計算されます。
3.安全余裕率が大きいほど、営業レバレッジは小さくなります。
営業レバレッジは、1÷安全余裕率 で計算されます。
固定費が小さいほど営業レバレッジは小さくなることがわかりました。
固定費を小さくすると、営業レバレッジが小さくなることを次で確認してみます。

最初の例では、販売管理費が1,800,000のとき、営業レバレッジは10倍でしたが、販売管理費を1,000,000にすると、営業レバレッジは2倍と小さくなります。
営業利益の「率の変化の大小」と、営業利益の「額の変化の大小」と混同しないことが重要です。
よって、経営の目指すべきは
利益率を大きくして、また固定費を小さくして営業レバレッジを小さくすることにあります。
商品販売計画
商品販売計画は次のような感じになりますでしょうか?

「来期は営業利益を2倍にしたいと思います!」
「当期の営業利益は200,000千円なので、来期目標額は400,000千円とします」
「そのために売上目標を10%UPに置きます。」
理由は
「当社の損益分岐点は14,400,000千円です。」
「現在の売上高は16,000,000千円ですので安全余裕率は10%です。」
「よって、営業レバレッジは1÷10%=10(倍)となります。」
「売上高が10%上昇すれば、10%×10倍=100% となり営業利益を2倍(100%UP)とすることが可能です。」
「売上を10%アップさせるために、
a商品をA市場に、単価〇〇円で数量を〇〇個を目標とします。
b商品をB市場へ、単価△△円で数量△個を目標とします。」
なお、これは利益率の12.5%は変わらないものとし、販売管理費も1,800,000千円で変わらない場合を想定しています。