限られた資金で投資をする場合、どの投資案件が一番有利なのかを判断する必要があります。
どのような指標を使って判断すればよいかを見ていきましょう。
今4つの 選択肢があり、それぞれのキャッシュフローは 次の通りです。
あなたは、どれに投資をしますか?
(投資はどれか1つだけとします)
まず、何をもって評価するかを考える必要があります。
まず考えられるのが、効率ですね。利回りというべきでしょうか。
定期預金の収益率(利回り)計算
定期預金の 利回りを 計算するのは 簡単です。
初期投資の10,000千円が 複利計算で5年後に 12,763千円となっています。
これは、エクセルのFV関数を使って求めると、5%という結果 が出ます。
内部収益率IRRとは
投資の収益率を判断する指標としてIRRというものがあります。
IRRの定義として教科書的な説明では
「IRRとは、投資期間のキャッシュフローの正味現在価値(NPV)が0となる割引率をIRR(Internal Rate of Return:内部収益率)という。」
という説明になりますが、わかりずらいので分かり易く説明してみます。
さきほど定期預金の収益率(利回り)は5%と求めることができました。
では、他の投資案件 の債券、事業投資A, 事業投資Bの投資効率はどのように求めたらよいのでしょうか?
(債券 は、初期投資 10,000千円で5年間毎年500千円づつ利益があり、最終年度に元本の10,000千円が戻ってきます。
これは次のようなイメージになります。
各期のCF(キャッシュフロー)をR%で 複利計算した場合の 将来価値を求めて(F1~F5)、それらを合計(y)する。
その合計金額 yは、初期投資額10,000千円をR%で複利運用した金額と同じになる。
このR%を求めるのがIRR関数である。
収益率を比較するには、算出する時点を ある一時点に合わせることが必要です。
通常IRRの 説明では、
各CFを現在の時点に合わせて計算するため
現在価値に直して、現在 の時点でのCFの合計が初期投資額と同額となる収益率を求める方法で説明されます。
しかし、ここでは将来の時点に合わせて計算しています。
それぞれの方法で投資をしたら5年後にいくらになっているか?
という考えですので、現在価値に割引いて現在の時点で考えるよりも、考え方としては馴染みやすいかと思います。
考え方として説明しましたが、いちいちこのように計算するのは手間がかかりますので、エクセルのIRR関数を使うとすぐに計算できます。
=IRR (B4:G4) と入力すれば5%という答えが出ます。
各投資案件についてもIRRを求めてみましょう。
事業投資Aと事業投資Bは共に初期投資は100,000千円であり、5年間の 収益合計は15,000千円です。
しかし, 内部収益率 IRRは事業投資Aが4.7%, 事業投資Bが5%となっています。
収益率に差が出るのは、事業投資Aの方が資金の回収が遅い のが原因です。
このようにIRRはキャッシュフローの 時間的価値も考慮した収益率として計算されます。
事業投資判断の仕方
IRRによりそれぞれの投資案件につき収益率を算出しました。
事業投資をする際、予測のキャッシュフローでIRRを計算すると、事業投資Aは4.7%, 事業投資Bは5.0%です。
どちらの事業も定期預金 のIRRを上回ることはできません。
事業に投資する場合には、利益だけではなく戦略的な観点も含んで投資をしますが、
収益率のみで判断した場合、事業Aにも事業Bにも投資することはできないという判断になります。
定期預金 の 利息 は労なく得られる利益であり、わざわざ 事業に投資をして苦労するくらいなら、定期預金 に事業投資と同じだけの投資をして利益を得た方がよいです。
事業に投資をする判断 として、ここでは定期預金 のIRR(5%)がひとつの 基準となり、これ以上のIRRを得られると予測するのであれば事業へ投資を行うというような考え方になります。
このIRRをハードルレートと呼びます。
では、ハードルレートに足りない場合、どれくらい機会損失 が考えられるのかを算出してみます。
この場合NPVを算出することになります。
NPVは、各期のCF(キャッシュフロー)を現在価値 に直して、その合計額から期投資額を控除した金額で表されます。
各期のCFをハードルレート(5%)で割引いてNPVを算出します。
プラスであればハードルレートよりも高い収益を得られるという判断になり、マイナスであればハードルレートよりも低い収益になるので事業投資は見送りという判断になります。
NPV計算の説明
事業投資Aを通してNPVの 計算方法 を見てみましょう。
事業AのNPVを定義すると
「事業Aは定期預金で運用する場合と比べて、現在の時点でいくらのプラス(マイナス)の価値があるのか」
ということになります。
事業投資AのCFが1年目から5年目まで各期において予測されています。
このそれぞれの期のCFを、ハードルレートIRRで現在価値 にします。(p1~p5)
それぞれ現在価値に割引いたCFを合計し、その合計額(y)から初期投資額(100,000千円)を控除した金額がNPVです。
事業投資AのIRRは4.7%でしたので、4.7%でそれぞれの期のCFを割引くとNPVはゼロとなります。
IRRとは、NPVがゼロとなる収益率を表しているからです。
IRRが4.7%の事業投資Aを、ハードルレート5%で割引きしたらどうなるでしょうか?
ハードルレート5%のところ、内部収益率 4.7%しか得られないため 機会損失 が発生することはわかります。
どれくらい機会損失になるかはNPVで計算することになります。
これにより、100,000千円の投資額に対して、844千円の機会損失が予測されることがわかります。
ここでいう機会損失というのは、ハードルレートを基準にした定期預金への投資に比較して機会損失が発生することを意味します。
4.7%の利益は出るため、損失ではありませんのでご注意下さい。