事業価値を評価するときに使う資本コストはどのように算出するのか

事業価値を 評価するとき、NPV (net present value:正味現在価値)や EVA (Economic Value Added:経済的付加価値) などの指標を使うことがあります。
これらの指標を計算するには資本コストが必要です。

M&Aにおいて企業を評価するにも必要な知識ですのでしっかりと理解しておきましょう。

資本コストとは

企業は銀行や 株主から 資金を 調達して各事業に投資をし、そのリターンから 投資家へ 利益を 還元していきます。

企業が獲得した 利益から、資金提供者へ 還元する利益を控除した残額が、企業に蓄積され 純資産を構成します。

資金提供者へのリターンが大きければ企業へ蓄積される額は 少なくなるし、小さければ純資産額は 大きくなります。

よって、企業側から見てこの資金提供者へのリターンはコストという認識となります。
このコストのことを capital cost (資本コスト)と呼びます。

capital cost (資本コスト)は
銀行へのコストと株主へのコストの2つで 構成され、
銀行へのコストは負債コスト、株主へのコストは 株主資本コストと呼びます。

企業のコストは、この2つのコストの 資本構成により決まります。
資本構成とは企業の全体資本における 負債と 株主資本の割合のことを言います。

よって資本コストを算式で示すと

資本コスト =   負債コスト ×   負債比率    +     株主資本コスト   ×    株主資本比率

となります。

  負債コストとは

負債コストは 借入金・社債などの 有利子負債にかかるコストです。

負債コストは企業の 信用力により異なり、信用力が高い企業ほど 金利は低くなります。

貸し手からみれば 回収のリスクが低いので 要求するリターンも低くなります。
逆に、 回収リスクの高い企業へは 要求するリターンも高くなります。

負債コストは、リスクがゼロの投資資産に求められるリターンであるリスクフリーレートと、信用リスクに応じたリターンの 上乗せ分である信用リスクプレミアムから構成されます。

負債コスト   =   リスクフリーレート + 信用リスクプレミアム

リスクフリーレートには、
国 が発行する債券である 国債の 利回りが使用されます。
通常10年物の 国債が使用されます。
国債がリスクゼロと断言することはできませんが。。

 

信用リスクプレミアムは
企業の 信用リスクをあらわす格付機関によって付与された 格付になります。

格付は企業の 信用力に対する評価であり、リスクの 度合いがアルファベットで 表示されています。

最も 信用力高く安全な企業の符号が AAA(トリプルA)であり、AA(ダブルA),   A(シングルA),  BBB(トリプルB)と続きます。

AAA格の企業の信用リスクプレミアムが最も小さいということになります。

BBB以上の 格付は 投資資産として適当と評価されており、

BB以下の 格付は投資と呼ぶにはリスクが高く投機的という評価になるようです。

負債コスト を考えるときには、税引後の負債コストを計算する必要があります。

負債コストに該当する支払利息は会社が法人税を計算する際、課税所得から控除されるため、 節税効果があり実際の金利よりも負担は小さくなります。

税引後負債コスト = 負債コスト ×(1-実効税率)

たとえば
負債コスト :  3%、
実効税率 :  30.62%

の場合、実際の負債コストは
3%  ×(1-30.62%) =  2.08%
が実際に負担となる負債コストとなります。

実効税率30.62%は次のように算出されます。

  株主資本コスト  とは

銀行へのコストである負債コストは借入金に対する金利ですのですぐに理解できると思います。

では株主への株主資本コストはどのくらいなのでしょうか?

株主 は、キャピタルゲインを期待して投資をします。

キャピタルゲインは保有していた資産の価格が変動することにより得られる利益のことを言います。

株主へ還元するリターンはこの期待値ということになり、企業側から見ればこの期待値が株主に対するコストということになります。

では、この期待値はどう算出すればよいのでしょうか?

期待値を算出といっても、株がどれだけ上がったら満足するのでしょうか?
どれだけのリターンを期待するのでしょうか?

期待値を決めるのは簡単ではないので 株主の期待リターンを推定するためのモデルを利用することになります。

 

  株主資本コストを計算する CAPMとは

株主資本コストの計算には CAPM(Capital Asset Pricing Model)という方法が用いられます。

株主資本コスト = リスクフリーレート  + マーケットプレミアム × β値

で計算されます。

リスクフリーレートとは
負債コストの計算のときにも使用しましたが、安全な資産に投資した際のリターンのことで、通常10年物国債の利率が利用されます。

マーケットプレミアムとは
株式市場に平均的に投資した場合に、安全な資産よりもどれだけ多いリターンが必要かというのがマーケットプレミアムになります。

ハイリスクであれば、ハイリターンが 要求され、ローリスクならばローリターンで がまんする のがリスクとリターンの関係です。

β値とは
では個別銘柄のリターンはどう算出したらよいのか?
それには市場平均よりも、個別の株価がどれくらい変動するかを数値化します。

このマーケットに対して何倍のリスクがありますか?という指標をβ(ベータ)値と呼びます。

市場平均が10%変動した場合、5%変動する銘柄(A)、10%変動する銘柄(B)、20%変動する銘柄(C)などいろいろです。

Aの銘柄の場合、市場平均が10%プラスに変動すれば5%プラスに変動し、市場が10%マイナスに変動すれば5%マイナスに変動します。

Cの銘柄の場合は、市場平均が10%プラスに変動すれば20%プラスに変動し、市場が10%マイナスに変動すれば20%マイナスに変動します。

リスクは振れ幅のことをいいますので、振れ幅が大きいことをリスクが大きいといいいます。

Aの場合は株式市場全体へ投資するよりもリスクが小さいのでリターンも小さくてよいはずです。

リスク(=株価の振れ幅)がhalf (半分)なのでプレミアムもマーケットプレミアムの半分でいいでしょうというのがCAPMの発想です。

Cの場合は株式市場全体へ投資するよりもリスクが大きいのでリターンも大きくあるべきです。

リスク(=株価の振れ幅)が市場平均の2倍なのでプレミアムもマーケットプレミアムの2倍くださいねというのがCAPMの発想です。

 

資本コストの構成イメージ

資本コストの構成イメージは次のようになります。

 

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