突然取引先A社より民事再生法のお知らせが届きました。
また、所有する債権につき次のようなことが書かれていました。
再生債権届出に関する説明
〇〇に対し,再生手続開始の決定がありましたので,再生手続開始決定通知書及び再生債権届出書用紙をお送りします。債権の届出をする方は,下記の説明事項及び同封の記入例をご覧のうえ,届出期限までに同封の返信用封筒でお送りください。
《届出期限》2019年12月20日必着
取引先には1千万円ほどの債権がありましたが、同じくらいの債務がありましたので相殺すればよいと安心していました。
ところが・・結果は債権の一部しか相殺できませんでした。
いざというときに相殺できるように債権管理には気を付けてきたはずが、
結局800万円の未回収が残ってしまいました。
今後のためにも議事録で残しておきたいと思います。
A社への債権と債務の状況は次の通りでした。
A社への債権(売掛金)残高 1,000万円
NO 回収期日 回収金額
1 2019年12月10日 200万円
2 2020年1月10日 500万円
3 2020年2月10日 300万円
A社への債務(買掛金)残高 1,000万円
NO 支払期日 支払金額
1 2020年1月31日 1,000万円
ポイントは、次の3つの期日にあります。
①債権届の提出期限日
②債権の回収日
③債務の支払日
相殺できるのは、債権届の提出期限までです。
債権届の提出期限は先方からの通知書にも書かれていた通り
2019年12月20日です。
よって、この期日までなら相殺は可能です。
しかし、相殺できるのは売掛金の回収日がそれまでに来るものしか相殺できません。
これは「期限の利益」といい、期限がくるまでは支払いをしなくてもよい(当社にとっては回収できない)というものです。
つまり、債権届の提出期限までに売掛金の期日が来るものしか相殺できません。
当社の状況においては、債権NO.1の回収期日が12月10日となっているもののみ相殺が可能であり、NO.2とNO.3は相殺できないことになります。
債務においては支払日が2020年1月31日ですが、期限の利益を放棄することにより相殺が可能となります。
債務においては、期限の利益を持っているのは当社です。
期限がくるまでは支払わなくてもよいという利益を持っていますが、
それを放棄するのは当社の勝手です。(先方に承諾を得るものではありません)
結果として次のようになりました。
2019年12月10日 200万円を相殺する
2019年12月15日 相殺通知書を発送する
2019年12月16日 800万円を債権残高として債権届を発送する
2020年 1月31日 800万円を支払う
これにより、債権の800万円が未回収として残り、今後の再建手続きにより支払いが確定するとのことです。
すべて支払われるかわかりませんが、後は待つことしかできません。
反省点
反省点は何といっても、売買契約書がなかったことです。
また、特に次のような条項がとても重要です。
期限の利益喪失条項
乙(債務者)が前項各号(解除事由)のいずれかに該当した場合、乙(債務者)は、当然に期限の利益を失い、甲(債権者)に対して本契約に基づいて負担する一切の金銭債務を直ちに弁済するものとする。
これがあれば、NO2とNO3の債権についても、期限の利益は喪失され回収期日を待たずして回収が可能となります。
つまり、債権届の期限までに相殺が可能ということになります。
やはり与信管理において、販売契約書を結ぶことはとても重要ですね。
既存の得意先に対して、今さら契約書を結んでくださいとは言いづらいと思いますが、会社のルールでどうしてもなどと、会社の法務部を悪者にしたらよいかもしれません。