値引き交渉で考えるべきこと

販売計画において「利益率の高い商品」を「多く販売する」ことが重要となります。

しかし、通常この2つのニーズは相反するものであり、「値段を安くする」代わりに「数量を多く買ってもらう」という交渉になるかと思います。

それには、お客様から値引きを交渉された場合、カウンターとしてどのくらいの数量増をお願いすればよいか把握しておく必要があります。

利益率が10%の商品Aにつき、お客様から次のような提案を受けたとします。

「商品Aを購入したいのだが、3%ほど値引きしてくれたら、いつもより多めに引き取らせてもらってもいいのだが」

あなたなら、数量何%アップを要求しますでしょうか?

算出式は次のようになります。

数量増要求率 = 対象商品の利益率  /  (対象商品の利益率 - 値引率 )

よって、0.1 / (0.1-0.03) = 1.428 となり
42.8%アップの数量増を約束してもらえないと、利益は減少してしまいます。

もし、商品の利益率が20%だとしたら、同じ3%の値引率でも

0.2  /  ( 0.1 - 0.03 ) =1.176  となり
17.6%アップの数量増要求で利益減少を免れることができます。

当然のことですが、商品の利益率がどれくらいあるかで応じることができる値引率も決まってきます。

値段交渉、数量交渉には、相手との力関係がありますので、単純に算式だけで交渉することはできません。

しかし、「いくらまでなら許容できるのか」を都度正確に把握できる力は必要です。

販売価格の算出方法

年も明け、2019年となりました。

年が変わり、事業計画を作成している方、計画を達成するために販売計画を練っている方、この時期は大変ですね。

販売計画において、利益率〇〇%を目指そう。
というように、利益率がポイントになることが多いかと思います。

利益率は販売価格の決定において正しく理解しておく必要がありますので、ここで確認しておきましょう。

利益率は売上高に占める粗利益の割合で、利益 / 売上高で示されます。

利益率は商品力を示すため、利益率の高い商品を持つことが経営においては大切なことです。

利益率は売値に対する利益の割合を示すのですが、実際の商売において販売価格を決めるのは買値が先に来るのではないでしょうか?

仕入値に対して、利益を上乗せして売値を決めるという流れになると思います。

計画において利益率が決められている場合、仕入値に対していくらの利益を乗せたらよいかを理解する必要があります。

仕入値1,000円の商品に対して、計画の利益率が20%だから
1,000円×20%=200円
と計算して、原価に乗せる利益を200円にしてはいけません。

この場合、利益率は  200/1,200 =16.6% になってしまいます。

仕入値にいくらの利益をのせたらよいかを計算するには、「利掛率」というものを使います。

利掛率とは原価に占める利益の割合のことをいい、
利掛率=利益/原価 で計算されます。

よって、原価にいくらの利益を乗せたらよいかは 原価×利掛率 で計算する必要があります。

「利益率」を「利掛率」に直す式は次のようになります。

利掛率=利益率/(1-利益率)

原価1,000円、利益率20%の場合の利掛率を求めると
20% / (1-20%) = 25% となります。

原価に利益率を乗じたものが、原価に乗せる利益となりますので、
利益は原価(1,000円)×利掛率(25%)=250円となり、販売価格は1,250円ということになります。

利益率と利掛率の意味合いを正しく理解して、販売価格の設定に間違いがないようにしましょう。

年度計画における営業レバレッジの使い方

年度予算の計画はどのようにたてていますか?

売上〇%必達!
販売管理費△%削減!

などは定番かと思います。

では、ご自分の会社の売上が1%増減したら、営業利益は何%増減するかを理解していますでしょうか?

売上が1%上がったら営業利益は何%上がるか

売上がいくら上積みされても、利益が残らなければ意味がありません。

いや、売上の上昇は運転資金の増加につながりますので、利益の上積みのない売上上昇は危険ですらあります。

利益が重要とはいえ、年度計画を立てる際には売上の目標が必要です。

利益を得るためにどのように行動するかを考える際、
何を(商品)、どこへ(お客様)、どれだけ(数量)、いくら(単価)
で販売するかを考えなければなりません。

売上= 数量 × 単価

ですので、数量と価格(値決め)の計画が必要であり、この要素をシミュレーションしながら売上高の目標を決めていきます。

しかし、肝心なのは利益がどれだけになるかですので、この売上の増減が利益の増減にどう影響するかをあらかじめ知っておく必要があります。

このときに利用するのが「営業レバレッジ」という数値です。 (adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});

たとえば営業レバレッジ10倍という会社があるとします。

この場合は、売上が1%上昇したら、営業利益が10% (1%×10倍)上昇することを意味します。

売上が5%上昇したら、営業利益は50%(5%×10倍)上昇することになります。

そして、売上が10%上昇したら、営業利益は100%!

つまり、2倍になるということです。

営業レバレッジの計算方法

営業レバレッジは次の手順で計算します。

1.損益分岐点=固定費÷(1-変動比率)
2.安全余裕率=(売上高−損益分岐点)÷売上高
3.営業レバレッジ=1÷安全余裕率

例)次の損益計算書で確認してみます。

(売上原価は変動費のみ、販売管理費は固定費のみとします。)

①損益分岐点=1,800,000(販売管理費)÷12.5%(売上総利益率)=14,400,000
②安全余裕率=(16,000,000(売上高)−① ) ÷16,000,000(売上高)=10.0%
③営業レバレッジ=1÷②=10(倍)

これにより、営業レバレッジは10倍となりました。

安全余裕率というのは、あと売上がどれくらい減少したら損益分岐点に到達するかを表します。

損益分岐点は、赤字にならないぎりぎりの売上高を意味しますので、安全余裕率10%というのは、あと売上高が10%減少したら営業利益はマイナスになることを意味します。

営業レバレッジはこの安全余裕率の逆数、つまり1÷安全余裕率で計算されます。

この場合には、1÷10%=10
となり、営業レバレッジは10(倍)となります。

これは、売上高の変化率に対して、その10倍の変化率で営業利益は変化するということを意味します。

売上が1%上昇したら、営業利益は10%(1%×10倍)上昇します。
売上が5%上昇したら、営業利益は50%   (5%×10倍)上昇します。
売上が10%上昇したら、営業利益は100% (10%×10倍)上昇します。

逆に、売上が減少した場合には、その10倍の率で営業利益は減少します。
売上が10%減少したら、営業利益は100%減少、つまりゼロになります。
これは、安全余裕率10%の意味と同じですね。

安全余裕率が小さい(損益分岐点まで余裕がない)ほど営業レバレッジは大きくなります。

安全余裕率が小さい=営業レバレッジが大きい=売上の変化が大きく利益に影響=リスクが大きい会社

ということになります。

営業レバレッジが大きいほど、営業利益が多くなるわけではない

営業レバレッジの解釈として注意すべきことがあります。

営業レバレッジが大きいほど、売上の変化率に対して営業利益の変化率が大きくなるのだから、営業レバレッジの大きい事業に注力すべきという間違った判断をしないように注意が必要です。

営業レバレッジはあくまでも、売上の変化率と営業利益の変化率の度合いを比較したものであり、少し売上をあげただけでおおきな利益をあげられることを意味するものではありません。

粗利率で考えてみましょう。

粗利率が大きいほど、営業レバレッジは小さくなることが次の手順よりわかります。

1.損益分岐点は、  固定費÷粗利率 で計算されます。
  粗利率が大きいほど、損益分岐点は低くなります。

2.損益分岐点が低いほど、安全余裕率は大きくなります。
  安全余裕率は、(売上高-損益分岐点)÷売上高 で計算されます。

3.安全余裕率が大きいほど、営業レバレッジは小さくなります。
  営業レバレッジは、1÷安全余裕率 で計算されます。
  

粗利率が大きいほど営業レバレッジは小さくなることがわかりました。
粗利率を大きくすると営業レバレッジが小さくなることを、次で確認してみます。

最初の例では、売上総利益率が12.5%の時は、営業レバレッジ10倍でしたが、売上総利益率を20%にすると、営業レバレッジは2.3倍と小さくなることがわかります。

また、固定費の面から考えてみます。

固定費が小さいほど、営業レバレッジは小さくなることが次の手順よりわかります。

1.損益分岐点は、  固定費÷粗利率 で計算されます。
  固定費が小さいほど、損益分岐点は低くなります。

2.損益分岐点が低いほど、安全余裕率は大きくなります。
  安全余裕率は、(売上高-損益分岐点)÷売上高 で計算されます。

3.安全余裕率が大きいほど、営業レバレッジは小さくなります。
  営業レバレッジは、1÷安全余裕率 で計算されます。
  

固定費が小さいほど営業レバレッジは小さくなることがわかりました。
固定費を小さくすると、営業レバレッジが小さくなることを次で確認してみます。

最初の例では、販売管理費が1,800,000のとき、営業レバレッジは10倍でしたが、販売管理費を1,000,000にすると、営業レバレッジは2倍と小さくなります。

営業利益の「率の変化の大小」と、営業利益の「額の変化の大小」と混同しないことが重要です。

よって、経営の目指すべきは
利益率を大きくして、また固定費を小さくして営業レバレッジを小さくすることにあります。

商品販売計画

商品販売計画は次のような感じになりますでしょうか?

「来期は営業利益を2倍にしたいと思います!」
「当期の営業利益は200,000千円なので、来期目標額は400,000千円とします」

「そのために売上目標を10%UPに置きます。」

理由は

「当社の損益分岐点は14,400,000千円です。」
「現在の売上高は16,000,000千円ですので安全余裕率は10%です。」
「よって、営業レバレッジは1÷10%=10(倍)となります。」

「売上高が10%上昇すれば、10%×10倍=100% となり営業利益を2倍(100%UP)とすることが可能です。」

「売上を10%アップさせるために、
a商品をA市場に、単価〇〇円で数量を〇〇個を目標とします。
b商品をB市場へ、単価△△円で数量△個を目標とします。」

なお、これは利益率の12.5%は変わらないものとし、販売管理費も1,800,000千円で変わらない場合を想定しています。

重要顧客は投資効率で考える

どのお客様が当社にとって重要な顧客かを判断するとき、売上高の大きさで判断してしまいがちです。

重要かそうでないかは、数字だけでは表せない部分もありますが、定量的に判断するには売上の大きさだけではなく投資効率で判断することが必要です。

たとえば
A社とB社という2つの会社があります。

A社は、毎月100万円の売上を上げ年間売上1,200万円です。
B社も、毎月100万円の売上を上げ年間売上1,200万円です。

どちらが儲かっていますか?

1.同じ
2.わからない

答えは2ですね

売上はお客様への販売価格であり、その原価がわからなければいくら稼いだかはわかりません。

では、

A社の利益率は10%
B社の利益率も10%

の場合はどちらが儲かっていますか?

1.同じ
2.わからない

大抵は、この利益率で判断してしまいがちです。

どちらも年間120万円の利益をあげますので年間の利益は同じです。
(1,200万円×10%=120万円)

どちらが儲かっているかという質問に対しては、どちらも120万円利益をあげているので同じという答えもできます。

どちらが効果的に儲けを出していますか?

効果的にというところまで考えると答えを出すには情報が足りません。

商売では、いくら投資をしていくら儲けたかということを考える必要があり、年間120万円の儲け額は同じでも、それぞれいくら投資したかを考える必要があります。

資金を余るほど持っていて、使い道に困っているといううらやましい会社であれば効率なんて考えずに、利益の額だけみて原価よりも売上が大きければどんどん投資すればよいと思います。

しかし、だいたいの会社は使える資金に限りがありますので、資金の効果的な使い方を考えることが重要です。

売上を上げたとき売掛金という債権が立ちます。

売掛金はお客様へ支払いを待ってあげる  ”つけ” ですね。

高校生のころ、部活が終わると帰り道で学校の近くのパン屋さんに寄っていつもただでパンを食べていました。
ただでというのは、後でまとめて支払いをするので  ”おばちゃんつけといて”なんていう感じでお腹がすいたときはいつも食べ放題です。

少し脱線しましたが、お客様へ支払いを待ってあげることを条件に各会社は取引をします(これを与信と呼びます)。

この”つけ”をいつまで待ってあげるかが商売における投資効率を考える意味において重要となります。

”つけ”をお客様への投資と考えて、つけである売掛金残高の金額に対してどれくらい利益を上げられるかを考えるのが「商売における投資効率」となります。

 

販売における投資効率とは

では、先の例のA社とB社にもう一度出てもらいましょう。

A社は毎月100万円を売上げ、利益率は10%です。
そして、売掛金の回収は3カ月で回収しています。

B社は毎月100万円を売上げ、利益率は10%です。
そして、売掛金の回収は6カ月で回収しています。

この場合

A社の年間投資効率は10%×4回転=40%と算出します。
B社の年間投資効率は10%×2回転=20%と算出します。

A社の方は300万円使って、120万円の利益をあげています。
B社の方は600万円使って120万円の利益をあげています。

よって、A社の方が投資効率はよく、B社とくらべて使う投資額が300万円も少ないのですから、その金額を他の投資へ使えばさらに利益はあがられることになります。

上の計算の4回転(A社)と2回転(B社)の意味を少し説明しておきます。

A社は、売掛金を3カ月で回収するので常に3か月分の売掛金残高を保有しています。

よって、売掛金(投資)が発生し回収をして、またそれを投資して回収して、またそれを投資して回収して・・というように年間4回繰り返します。
(12か月÷3カ月=4回転)

B社は、売掛金を6カ月で回収するので常に6カ月分の売掛金残高を保有しています。

よって、売掛金(投資)が発生し回収して、またそれを投資して回収します。

B社の場合はこれで1年が過ぎてしまい2回転(12か月÷6カ月=2回転)しかしません。

 

もうひとつ例をあげてみます

C社の売上が毎月100万円で利益率が10%とします。
売掛金回収期間は1か月とします。

D社の売上は毎月100万円で利益率が30%とします。
売掛金の回収期間は4カ月とします。

 

C社
年間売上高 1,200万円
年間利益   120万円
利益率   10%
売掛金回収 1か月(=年間12回転)
常時売掛金残高 100万円
投資効率 120%

 

D社

年間売上高 1,200万円
年間利益  360万円
利益率   30%
売掛金回収 4カ月(=年間3回転)
常時売掛金残高 400万円
投資効率  90%

 

D社の方がC社よりも利益率は高いですが、投資効率ではC社の方が高いです。
この投資効率は次のように計算します。

投資効率=利益率×売掛金回転数

C社投資効率=10%×12回転=120%
D社投資効率=30%×3回転= 90%

C社は100万円を使って年間120万円を稼いでいる
D社は400万円を使って年間360万円を稼いでいる

 

利益額だけで見れば、D社の方が多く稼いでいます。

しかし、C社はD社と比較して300万円投資額が少ないので、それをD社の投資効率90%を上回る他の投資に回せるのであれば、トータルでC社の方が利益額は多くなります。

利益額を重要点として、投資効率は悪くても利益をなるべく多くとりにいくか、投資効率を重要点として、少ない投資資金で利益を最大化することを考えるかは会社の経営判断になります。

しかし、どちらの戦略にしても使える資金でできるだけ多くの利益を取りに行くことは共通ですので、商売においても投資効率を考えることは重要です。

重要なお客様の判断基準としては、売上高の大きさのみで考えるのではなく
利益率、債権回転期間も含めた投資効率で見ることも必要です。

 

実際に負担する資金を投資額と考える

ここで感のよい方は疑問に思ったかと思います。
債務の期間はどう考えたらよいのか?と。。

これまで投資効率を説明するにあたり、わかりやすいように債権回転期間のみで説明しました。債権回転期間というのは販売してから回収までの期間をいいます。

しかし、実際に投資効率を判断するのは債権回転期間から債務回転期間を引いた期間で計算する必要があります。
なぜなら、その期間が実際に資金を負担していることになるからです。
この資金負担額を投資額とみなして計算します。

計算式は次のようになります。

投資効率=利益率×  (  12カ月 /(債権回転期間−債務回転期間))

たとえば、利益率30%の商品を仕入れて販売するとします。

販売から回収まで4カ月かかり、支払は仕入から1カ月後とした場合、債権回転期間は4カ月、債務回転期間は1カ月となります。

実際に資金を負担するのは3カ月ですので投資効率は次のようになります。

投資効率=30%×  (  12カ月 / 3カ月 )= 120%

もしも、債務回転期間が債権回転期間よりも長い場合には、たとえ利益率が小さくても投資する価値はあります。
資金負担がなく利益があげられるのですから。。

販売価格の決定の仕方

仕入価格がRMB(人民元)で販売価格がUSDの商売です。

仕入れ価格は1個 1,000RMBです。これを基にドル建ての販売価格をお客様と決めていきます。

為替リスクは当社で負うことになるので、利益率を10%で設定しました。(もう少しほしいところですが)

現在のRMB/USDレートが6.5RMB/$のとき、利益率を10%にするには、販売価格をいくらで設定すればよいのでしょうか?

 

まず、販売価格を人民元建てでいくらにするかを設定します。

利益率10%、仕入価格が1,000RMBのとき、売値はいくらになるかを計算します。

計算式は 1,000÷(1-10%)=1,111.11 RMB となります。

1,000×(1+10%)=1,100と、仕入れ価格に10%上乗せして計算する人がいますが、損してしまいますので注意して下さいね。

仕入価格(1,000)を 原価率(1-10%)で割ってあげることが大切です。

 

次に、人民元で決まった販売価格を、値決めレートで換算してドル建て販売価格にします。

値決めレートが何%動いたら販売価格を修正する取り決めも販売契約に盛り込んだ方がいいですね。

よって、販売価格は1個当たり 1,111.11÷6.5=170.94 USD と決まりました。

 

その後、6.5RMB/$だったのが、6.2RMB/$と人民元高(ドル安)になりました。

この時、販売価格をいくらにしたらよいのでしょうか?

計算式は、

170.94 (現在のドル建て販売価格)×(6.5 ÷ 6.2)=179.21 USD

となります。

逆に、6.5RMB/$だったのが7.0 RMB/$と人民元安(ドル高)になった場合には

170.94 (現在のドル建て販売価格)×(6.5 ÷ 7.0)=158.73 USD まで値下げ交渉に応じる余地があります。

為替変動による修正販売価格の計算式は、

現在のドル建て販売価格  ×(値決めレート  ÷  実勢レート)=修正販売価格

となります。