利益の増減要因を分析する

事業報告をします。

前年のH事業における売上総利益は次の通りでした。
おしまい・・

これでは社長からお叱りを受けるのは目に見えていますね。

利益は商品別に前年と比較してどうだったのか?
商品別に数量の変動はどれくらいあったのか?単価変動は?
数量の変動が利益の増減に寄与した分はどれくらいか?単価変動が利益に影響した額はどれくらいか?

せめてこれくらいは答えなければなりません。

では情報を整理して報告書を作成してみましょう。

H事業の商品別の粗利益は次の通りでした。

表1

また商品ごとの数量と単価情報を追加します。

表2

これで情報は整いました。

では、2020年度の利益と2019年度の利益の増減額において、
数量が影響した額と、単価が影響した額をそれぞれ算出してみましょう。

ここでもうひとつ用意しておく情報として、商品別の利益単価が必要となります。

利益=(販売単価-仕入単価)×数量

ですので、先の単価表から①販売単価-②仕入単価、つまり利益単価の金額を算出しておきます。

表3

商品Aの利益増減要因分析

では商品Aについてみていきましょう。

商品Aの利益は2019年度は30,900,000円、2020年度は20,000,000円でした。
(表1より)

10,900,000円のマイナスです。。

数量は2019年度が103,000 (kg), 2020年度が50,000 (kg)ですので53,000 (kg)減少しました。(表2より)

利益単価は2019年度が300円、2020年度が400円と100円増加しました。
(表3より)

ここで次の図を描いてみましょう。

赤の□の面積が当期(2020年度)の利益額となります。
当期数量(50,000kg)×当期単価(400円)=20,000,000円

青の□の面積が前期(2019年度)の利益額となります。
前期数量(103,000kg) ×前期単価(300円)=30,900,000円

数量減少による面積(利益)の減少額と単価の増加による面積(利益)の増加額の合計が、利益の増減額となります。

計算してみると次のようになります。

数量減少による面積(利益)の減少額は
(当期数量:50,000kg-前期数量:103,000kg ) ×前期単価:300円=▲15,900,000円・・①

利益単価増加による面積(利益)の増加額は
(当期単価:400円-前期単価:300円)×当期数量:50,000kg=5,000,000円・・②

利益の増減額は
①+②=▲10,900,000円となり、表1の金額と一致していることがわかります。

商品Bの利益増減要因分析

では商品Bについてもみていきましょう。

商品Bの利益は2019年度は5,600,000円、2020年度は14,700,000円でした。
(表1より)

9,100,000円と大幅に増加しています。

数量は2019年度が70,000 (kg), 2020年度が147,000 (kg)ですので77,000 (kg)増加しました。(表2より)

利益単価は2019年度が80円、2020年度が100円と20円増加しました。
(表3より)

ここで次の図を描いてみましょう。

 

赤の□の面積が当期(2020年度)の利益額となります。
当期数量(147,000kg)×当期単価(100円)=14,700,000円

青の□の面積が前期(2019年度)の利益額となります。
前期数量(70,000kg) ×前期単価(80円)=5,600,000円

数量増加による面積(利益)の増加額と単価の増加による面積(利益)の増加額の合計が、利益の増減額となります。

 

計算してみると次のようになります。

 

数量増加による面積(利益)の増加額は
(当期数量:147,000kg-前期数量:70,000kg ) ×前期単価:80円=6,160,000円・・①

利益単価増加による面積(利益)の増加額は
(当期単価:100円-前期単価:80円)×当期数量:147,000kg=2,940,000円・・②

利益の増減額は
①+②=9,100,000円となり、表1の金額と一致していることがわかります。

 

通常は、単価を下げて数量を多く販売するか、数量が下がるのを覚悟で単価を上げるかの選択になり、単価と数量は反比例の関係にあるかと思います。

単価も数量も増加した商品はどんな理由があるのかさらに分析が必要です。

商品Cと商品Dの利益増減要因分析

商品Cと商品Dについても分析図を示しておきますので確認してみて下さい。

商品C

商品D

粗利益の増減はなくても、分解してみると数量の増減と単価の増減がありますのでそれぞれの増減要因を確認しておく必要があります。

借入金総額は多いのか?妥当なのか検証する

会社は事業を運営するうえで資金が必要であり、銀行などから資金調達をします。

銀行は、その会社の信用度により貸し付ける資金の総額を決めます。
財務の担当者としては、銀行から見てどれくらいが貸付ける金額として妥当なのかを知りたいところです。

一番のポイントはなんといっても事業の評価であることは間違いありません。
現在赤字で大きな借金があったとしても、今後莫大な利益が見込まれるのであればいくらでも資金調達することは可能です。(その将来性を評価してもらえるのであればですが)

ここではそのような収益性を除き、バランスシートにおいて借入金の限度はどれくらいなのかを判断してみます。

銀行より短期と長期を合わせて43億円を借り入れています。
この額は大きすぎるのか、妥当なのか?

次のバランスシートにより検証してみます。

                              単位:千円

運転資本
運転資本からみた借入金総額の妥当性検証

事業を運営するために、いくらの資金が必要なのかを考えます。
事業運営をするために必要な資金は運転資金として算出します。

運転資金は通常、売上債権、棚卸資産、買掛債務により求めますが、手元資金がゼロでは事業運営ができませんので、現金および預金も事業運営に必要な資金として含めて計算します。

上記のバランスシートにより運転資金は、4,451,900千円となります。
現預金(C3)+売掛債権(C4)+棚卸資産(C5)-買掛債務(F3)
=4,451,900千円

よって、事業を運営するにあたり44億円が必要であり、その分の借入金が必要となります。

運転資金の各項目と借入金の関係は次の通りです。

現預金
事業を運営するにあたり現金および預金は必要であり、その分借入が必要となる。

売掛債権
販売をしたけどまだ現金を回収していないため、資金が不足する状態であり、その分借入が必要となる。

棚卸資産
購入したがまだ売上になっていないものであり、購入した分資金が不足している状態であり、借入が必要となる。

買掛債務
仕入をしたけど支払いを待ってもらっているため、資金に余裕がある状態であり、その分借入は必要ない。

一方、当社の借入金は次の通り4,308,700千円となります。
短期借入金(F4)+長期借入金(F9)=4,308,700千円

短期借入金とは、銀行などにより借り入れた金額のうち、返済期限が1年以内のものをいい、長期借入金とは返済期限が1年以上のものをいいます。

運転資本と借入金の関係

 

結論
借入金総額は運転資金以内に収まっているので妥当と判断

借入金(43億円)は、運転資金(44億円)以内ですので、事業運営において必要な資金のみ借入調達していると判断できます。

もしも借入金の額が運転資金の額を超える場合には、その超える分他の資産(たとえば固定資産)のために資金を調達していることになります。

調達した資金が運転資金で消えてしまうことは、借り入れる側としてよいことではありません。
同じ借入総額であれば、売掛金を早く回収して、在庫の回転率を上げて在庫を減らし、なるべく運転資金を少なくすればその浮いた分を投資や固定資産の購入などに充てることができます。

逆に銀行から見た場合、貸した資金(貸付金)が運転資金のみに使用され他の固定資産の購入などに使われていないとすれば、安心の面はあります。

仮に今会社が倒産し、貸付金がどれくらい回収できるかを考えてみた場合、運転資金のみに貸付金が使われているのであれば、売掛債権を回収して、在庫を売り切り、買掛債務を返済した後の資金で貸付金の回収が可能となります。

貸付金が固定資産の購入に使われている場合には、その固定資産を売却した資金で貸付金を回収しなければならないため、貸す側としてはその固定資産がはたして売却できるのか、または売却してお金になるのか不安なところです。

よって、貸す側(銀行)としては、貸した資金が運転資金のみに使用されているのであれば安全とみなします。

もちろん、運転資本を構成する売掛金、在庫などに不良が混ざっていないことが前提です。

さらに
流動資産>流動負債+固定負債 となっていたら安全です。
会社を清算するとしても、流動資産(1年以内で資産化できるもの)のみで負債の総額を返済できてしまうのですから。

バランスシートから計算してみると次のようになります。

① 流動資産=6,891,700千円(C2)
② 負債合計=7,154,000千円(F2+F8 )
①-②=▲262,300千円

2.6億円ほど不足していますが、ほぼ流動資産のみで負債総額を返済できるのでバランスシートは健全であり、「借入金総額43億円は妥当な大きさである」と評価することができるのではないでしょうか。

エクセルFV関数利用の注意点

当社では、企業型確定拠出年金を行っており、社員が自分で退職金を運用しています。

毎月会社から拠出金が個人の口座(DC口座)へ振り込まれ、60歳まで自分で運用します。

社員には自分で投資シミュレーションができるように教育をしています。

 

積立金運用の計算(FV関数)

教育の中で大部分の者が間違えている箇所がありましたので記述しておきます。

問題1

毎年、拠出金額が会社から個人のDC口座へ50万円振り込まれます。
(実際は毎月振り込まれます)

2018年期末から10年間、金利2%で運用する場合、10年後いくらになっているでしょうか?
会社からの拠出金は年末に入金されるものとします。

 

FV関数は次の通りです。
=FV(利率、期間、定期支払額、現在価値、支払期日)

よって回答は
=FV(2%, 10, −500,000, 0 , 0 )
=5,474,860円となります。

しかし、これでは間違い。

答えは6,084,358円にならなければなりません。

間違いのポイントは「期間」です。

10年間運用するのだから「10」でよい気がしますが、ここは
「運用期間」ではなく「積立回数」を入力する必要があります。

よって
=FV(2%, 11, −500,000, 0 , 0 )
=6,084,358円となります。

 

ここで疑問が出てきます。

積立てを始める際、すでに保有している金額が100万円あった場合、どうすればよいのでしょうか?

FV関数の「現在価値」の箇所に「-1,000000」と入れればよいのでしょうか?

 

一時金運用の計算(FV関数)

検証のため、FV関数を使って一時金運用について見てみます。

 

問題2

2018年期末に100万円投資をします。金利2%で運用する場合、10年後いくらになっているでしょうか?

 

まずエクセルで計算すると次のようになり、1,218,994円となります。

FV関数を使用して計算してみると
=FV(2%, 10, 0, -1000000, 0 )
=1,218,994

FV関数の答えと表の答えが一致しているので、FV関数の使用方法は間違っていないようです。

 

一時金と積立ての両方がある場合の計算(FV関数)

 では、一時金と積立ての両方がある場合はFV関数はどう利用したらよいのでしょうか?

問題3

毎年、拠出金額が会社から個人のDC口座へ50万円振り込まれます。
2018年から10年間、金利2%で運用する場合、10年後いくらになっているでしょうか?
会社からの拠出金は年末に入金されるものとし、開始時において100万円保有しているものとします。

 

問題3は問題1と問題2を合わせたものなので、
答えは7,303,352円となります。

ここで、FV関数を使用するにおいて困ったことが起こります。

=FV(2%,「期間」,-500000, -1000000, 0 )

FV関数はこのように表されますが、

「期間」の箇所が

積立て運用の場合(問題1)は積立回数が「11」回でしたが、
一時金運用の場合(問題2)は運用期間が「10」年です。

期間の数値が異なるので一緒にはFV関数を使用できないようです。

 

一時金運用の場合の運用期間が「11」年であれば積立回数の「11」と同じになりFV関数を利用できそうです。

この場合、期首に積立てをする場合には
積立回数も「11」回となり、一時金運用も「11」年となり、FV関数の「期間」の数値が一致します。

よって、問題3において期首に積立てをする場合には

=FV (金利、期間、積立額、現在価値、支払期日)
=FV (2% , 11,  -500000,  -1000000,  1 )
=7,327,732

となります。
(ただし、現在価値は期首の金額を入力する必要があります)

 

年平均成長率計算の仕方

来期の事業計画を立てる際、どのように数値を予測していますでしょうか?

過去の売上データから将来の売上高を予測する方法として、年平均成長率を利用することがあります。

下の表は2014年度から2018年度のA商品における売上高の実績データであり、これから2019年度の売上高を予測します。

 2014年2015年2016年2017年2018年
売上高(万円)4,5004,8005,3005,5006,200
対前年増加率(%)6.7%10.4%3.8%12.7%

2019年度の売上高が2014年~2018年の平均増加率で増加すると仮定した場合に「年平均成長率」を利用することできます。

年平均成長率の計算方法

年平均成長率を計算するときは次の式を使います。

この式にデータを当てはめて計算すると

=0.08341  (8.34%)

これより2014年度から2018年度までの年平均成長率が8.34%とわかりましたので
2019年度の売上高を算出すると6,717万円となります。

2019年度売上高予測=6,200 (2018年度売上高)×(1+0.0834 ) =  6,717 万円

ルート計算ですが、エクセルで求めると次のように  1  / (m-n )  乗をします。

=(6,200 / 4,500)^(1/4)-1
=0.0834

式の考え方
A商品の売上高は2014年度に4,500万円だったものが、4年後の2018年度には6,200万円まで増加しており、この間1.37倍となっています。

1年あたりの増加率は、この1.37倍の4乗根を計算することにより求められます。

年平均成長率は、年度計画など予算を組む際に使用されます。
来期売上高を計画する際、なぜその額になるのか根拠のある数値を示しましょう。

当然、過去の推移のまま将来が続くとは限りません。
年平均成長率で求めた値を、将来の環境の変化を加味して予測値とします。
そして、その値に戦略的な変化を加味して来期の計画となります。

運転資本と借入金の関係

会社は銀行から資金を調達して事業運営を行います。
銀行が企業へ資金を貸し出す量の目安として、月商の3倍を基準にしているとよく言われます。

もちろん評価基準はそれだけではなく、業績推移や業界動向、投資効率など他の面も加味して評価されるのですが、そのうちのひとつとして「運転資本はどれくらいか」という基準があります。

運転資本とは

運転資本とは、会社が日々事業を営んでいくために必要な資金を言います。

日常の営業取引を3点に絞ってそれぞれの取引条件を見ることにより、必要な資金量を求めることができます。

運転資本は企業の支払能力を示すものであり、銀行が企業に貸し出す資金量の目安としています。

その3点とは,次のものをいいます。

① 売上債権:商品やサービスを掛取引で販売したが、まだ受け取っていない代金で、売掛金や受取手形などをいいます。

②棚卸資産:在庫であり、商品、製品だけでなく、原材料や仕掛品なども含みます。

③仕入債務:商品やサービスを掛取引で購入したが、まだ支払っていない代金で、買掛金や支払手形などをいいます。

この3点を使い運転資本を計算すると次のようになります。

運転資本=①売上債権+②棚卸資産-③仕入債務

もしも、企業の資産が売上債権(2,000万円)と棚卸資産(1,000万円)しかなく、負債が仕入債務(1,500万円)しかないとした場合のバランスシート(貸借対照表)は次のようになります。

バランスシートの見方として
会社が事業活動をする上でどのように資金を調達しているかを見るのは貸方側(右側)を見ればよく、その調達した資金をどのように運用しているかは借方側(左側)を見れば分かります。

この例では、仕入債務と運転資本で資金を調達し、その資金が売上債権、棚卸資産として運用されているということが説明できます。

仕入債務は支払いを待ってもらっているので、資金調達とも言えます。
そして調達した資金は、売上債権と棚卸資産という資産に”ばけている”ということになります。

運転資本という科目はないのですが、大きく分けて
短期借入金、長期借入金、自己資本になるかと思います。

要するに、事業活動を営むにあたり調達不足額(運転資本)を短期で借入て調達するか、長期で借入れて調達するか、または自己資金で担うかということです。

この運転資本をいかに小さくするかが、資金繰りを楽にするポイントとなります。

理想は「回収は早く」、「支払いは遅く」、「在庫は少なく」ですね。

しかし、相手があることですので、こちら側の「回収は早く」は、相手側にとっては「支払いは早く」になりますので、難しいところです。

営業担当者はなるべく円滑に取引を進めたいので、回収条件として相手側に合わせて回収は遅くなりがちです。また在庫も多めに取りがちになります。

そうすると、売上債権と棚卸資産が増加し、運転資本が大きくなります。
そのため、借入金で調達することになり借入利息の負担も大きくなっていきます。

キャッシュコンバージョンサイクルとは

運転資本は、日商(年間売上高÷365日)の何日分が必要かという見方もあります。

運転資本の計算式は
運転資本=売上債権+棚卸資産-仕入債務
と、それぞれの項目の残高で計算されました。

「運転資本は日商の何日分か」を計算するには、それぞれの項目を回転日数に直してあげれば求めることができ、
これを「キャッシュ・コンバージョンサイクル」と呼び次の式で算出されます。

キャッシュ・コンバージョンサイクル(日商の〇日分)=
売上債権回転日数(日商の〇日分)+棚卸資産回転日数(日商の〇日分)-仕入債務回転日数(日商の〇日分)

たとえば、
売上債権回転日数:102日  売上債権 /  (年間売上高÷365)
(売上をする日から回収する日まで何日あるか)

棚卸資産回転日数:20日  棚卸資産 / ( 年間売上高÷365)
(在庫をする日から売上げをする日まで何日あるか)

仕入債務回転日数:91日   仕入債務 / (年間売上高÷365)
(仕入をする日から支払いをする日まで何日あるか)

とした場合、
キャッシュコンバージョンサイクル=102日+20日-91日=31日
となり、日商(1日の平均売上高)の31日分の借入が必要ということになります。

※棚卸資産回転日数・仕入債務回転日数の計算は、分母に「売上高」ではなく「売上原価」を用いる場合もあります。
ここでは、「運転資本は日商の何日分か」を知りたいので分母は売上高としています。

1回だけの取引を図で示すと次のようになります。

4/1に商品を買掛金で購入し、そのまま在庫する。
在庫は20日過ぎた後、4/20に売掛金で販売をする。
その後6/30に現金支払いを行う。
7/31に現金を回収する。

よって、6/30の支払いから7/31の回収まで31日分の運転資本が必要であり、この間の資金を補うため借入を行う必要があるということになります。

 

運転資本がマイナスの会社も当然あります。
支払いよりも回収が先行しており、資金繰りは非常に楽になります。

掛けで商品を購入して、その商品を販売し即現金をもらう。
その現金を掛けの支払いに充てる。

これであれば手元に現金がなくても商売ができてしまい、無からお金を生み出すことになりますね。

 

年度計画における営業レバレッジの使い方

年度予算の計画はどのようにたてていますか?

売上〇%必達!
販売管理費△%削減!

などは定番かと思います。

では、ご自分の会社の売上が1%増減したら、営業利益は何%増減するかを理解していますでしょうか?

売上が1%上がったら営業利益は何%上がるか

売上がいくら上積みされても、利益が残らなければ意味がありません。

いや、売上の上昇は運転資金の増加につながりますので、利益の上積みのない売上上昇は危険ですらあります。

利益が重要とはいえ、年度計画を立てる際には売上の目標が必要です。

利益を得るためにどのように行動するかを考える際、
何を(商品)、どこへ(お客様)、どれだけ(数量)、いくら(単価)
で販売するかを考えなければなりません。

売上= 数量 × 単価

ですので、数量と価格(値決め)の計画が必要であり、この要素をシミュレーションしながら売上高の目標を決めていきます。

しかし、肝心なのは利益がどれだけになるかですので、この売上の増減が利益の増減にどう影響するかをあらかじめ知っておく必要があります。

このときに利用するのが「営業レバレッジ」という数値です。

たとえば営業レバレッジ10倍という会社があるとします。

この場合は、売上が1%上昇したら、営業利益が10% (1%×10倍)上昇することを意味します。

売上が5%上昇したら、営業利益は50%(5%×10倍)上昇することになります。

そして、売上が10%上昇したら、営業利益は100%!

つまり、2倍になるということです。

営業レバレッジの計算方法

営業レバレッジは次の手順で計算します。

1.損益分岐点=固定費÷(1-変動比率)
2.安全余裕率=(売上高−損益分岐点)÷売上高
3.営業レバレッジ=1÷安全余裕率

例)次の損益計算書で確認してみます。

(売上原価は変動費のみ、販売管理費は固定費のみとします。)

①損益分岐点=1,800,000(販売管理費)÷12.5%(売上総利益率)=14,400,000
②安全余裕率=(16,000,000(売上高)−① ) ÷16,000,000(売上高)=10.0%
③営業レバレッジ=1÷②=10(倍)

これにより、営業レバレッジは10倍となりました。

安全余裕率というのは、あと売上がどれくらい減少したら損益分岐点に到達するかを表します。

損益分岐点は、赤字にならないぎりぎりの売上高を意味しますので、安全余裕率10%というのは、あと売上高が10%減少したら営業利益はマイナスになることを意味します。

営業レバレッジはこの安全余裕率の逆数、つまり1÷安全余裕率で計算されます。

この場合には、1÷10%=10
となり、営業レバレッジは10(倍)となります。

これは、売上高の変化率に対して、その10倍の変化率で営業利益は変化するということを意味します。

売上が1%上昇したら、営業利益は10%(1%×10倍)上昇します。
売上が5%上昇したら、営業利益は50%   (5%×10倍)上昇します。
売上が10%上昇したら、営業利益は100% (10%×10倍)上昇します。

逆に、売上が減少した場合には、その10倍の率で営業利益は減少します。
売上が10%減少したら、営業利益は100%減少、つまりゼロになります。
これは、安全余裕率10%の意味と同じですね。

安全余裕率が小さい(損益分岐点まで余裕がない)ほど営業レバレッジは大きくなります。

安全余裕率が小さい=営業レバレッジが大きい=売上の変化が大きく利益に影響=リスクが大きい会社

ということになります。

営業レバレッジが大きいほど、営業利益が多くなるわけではない

営業レバレッジの解釈として注意すべきことがあります。

営業レバレッジが大きいほど、売上の変化率に対して営業利益の変化率が大きくなるのだから、営業レバレッジの大きい事業に注力すべきという間違った判断をしないように注意が必要です。

営業レバレッジはあくまでも、売上の変化率と営業利益の変化率の度合いを比較したものであり、少し売上をあげただけでおおきな利益をあげられることを意味するものではありません。

粗利率で考えてみましょう。

粗利率が大きいほど、営業レバレッジは小さくなることが次の手順よりわかります。

1.損益分岐点は、  固定費÷粗利率 で計算されます。
  粗利率が大きいほど、損益分岐点は低くなります。

2.損益分岐点が低いほど、安全余裕率は大きくなります。
  安全余裕率は、(売上高-損益分岐点)÷売上高 で計算されます。

3.安全余裕率が大きいほど、営業レバレッジは小さくなります。
  営業レバレッジは、1÷安全余裕率 で計算されます。
  

粗利率が大きいほど営業レバレッジは小さくなることがわかりました。
粗利率を大きくすると営業レバレッジが小さくなることを、次で確認してみます。

最初の例では、売上総利益率が12.5%の時は、営業レバレッジ10倍でしたが、売上総利益率を20%にすると、営業レバレッジは2.3倍と小さくなることがわかります。

また、固定費の面から考えてみます。

固定費が小さいほど、営業レバレッジは小さくなることが次の手順よりわかります。

1.損益分岐点は、  固定費÷粗利率 で計算されます。
  固定費が小さいほど、損益分岐点は低くなります。

2.損益分岐点が低いほど、安全余裕率は大きくなります。
  安全余裕率は、(売上高-損益分岐点)÷売上高 で計算されます。

3.安全余裕率が大きいほど、営業レバレッジは小さくなります。
  営業レバレッジは、1÷安全余裕率 で計算されます。
  

固定費が小さいほど営業レバレッジは小さくなることがわかりました。
固定費を小さくすると、営業レバレッジが小さくなることを次で確認してみます。

最初の例では、販売管理費が1,800,000のとき、営業レバレッジは10倍でしたが、販売管理費を1,000,000にすると、営業レバレッジは2倍と小さくなります。

営業利益の「率の変化の大小」と、営業利益の「額の変化の大小」と混同しないことが重要です。

よって、経営の目指すべきは
利益率を大きくして、また固定費を小さくして営業レバレッジを小さくすることにあります。

商品販売計画

商品販売計画は次のような感じになりますでしょうか?

「来期は営業利益を2倍にしたいと思います!」
「当期の営業利益は200,000千円なので、来期目標額は400,000千円とします」

「そのために売上目標を10%UPに置きます。」

理由は

「当社の損益分岐点は14,400,000千円です。」
「現在の売上高は16,000,000千円ですので安全余裕率は10%です。」
「よって、営業レバレッジは1÷10%=10(倍)となります。」

「売上高が10%上昇すれば、10%×10倍=100% となり営業利益を2倍(100%UP)とすることが可能です。」

「売上を10%アップさせるために、
a商品をA市場に、単価〇〇円で数量を〇〇個を目標とします。
b商品をB市場へ、単価△△円で数量△個を目標とします。」

なお、これは利益率の12.5%は変わらないものとし、販売管理費も1,800,000千円で変わらない場合を想定しています。

重要顧客は投資効率で考える

どのお客様が当社にとって重要な顧客かを判断するとき、売上高の大きさで判断してしまいがちです。

重要かそうでないかは、数字だけでは表せない部分もありますが、定量的に判断するには売上の大きさだけではなく投資効率で判断することが必要です。

たとえば
A社とB社という2つの会社があります。

A社は、毎月100万円の売上を上げ年間売上1,200万円です。
B社も、毎月100万円の売上を上げ年間売上1,200万円です。

どちらが儲かっていますか?

1.同じ
2.わからない

答えは2ですね

売上はお客様への販売価格であり、その原価がわからなければいくら稼いだかはわかりません。

では、

A社の利益率は10%
B社の利益率も10%

の場合はどちらが儲かっていますか?

1.同じ
2.わからない

大抵は、この利益率で判断してしまいがちです。

どちらも年間120万円の利益をあげますので年間の利益は同じです。
(1,200万円×10%=120万円)

どちらが儲かっているかという質問に対しては、どちらも120万円利益をあげているので同じという答えもできます。

どちらが効果的に儲けを出していますか?

効果的にというところまで考えると答えを出すには情報が足りません。

商売では、いくら投資をしていくら儲けたかということを考える必要があり、年間120万円の儲け額は同じでも、それぞれいくら投資したかを考える必要があります。

資金を余るほど持っていて、使い道に困っているといううらやましい会社であれば効率なんて考えずに、利益の額だけみて原価よりも売上が大きければどんどん投資すればよいと思います。

しかし、だいたいの会社は使える資金に限りがありますので、資金の効果的な使い方を考えることが重要です。

売上を上げたとき売掛金という債権が立ちます。

売掛金はお客様へ支払いを待ってあげる  ”つけ” ですね。

高校生のころ、部活が終わると帰り道で学校の近くのパン屋さんに寄っていつもただでパンを食べていました。
ただでというのは、後でまとめて支払いをするので  ”おばちゃんつけといて”なんていう感じでお腹がすいたときはいつも食べ放題です。

少し脱線しましたが、お客様へ支払いを待ってあげることを条件に各会社は取引をします(これを与信と呼びます)。

この”つけ”をいつまで待ってあげるかが商売における投資効率を考える意味において重要となります。

”つけ”をお客様への投資と考えて、つけである売掛金残高の金額に対してどれくらい利益を上げられるかを考えるのが「商売における投資効率」となります。

 

販売における投資効率とは

では、先の例のA社とB社にもう一度出てもらいましょう。

A社は毎月100万円を売上げ、利益率は10%です。
そして、売掛金の回収は3カ月で回収しています。

B社は毎月100万円を売上げ、利益率は10%です。
そして、売掛金の回収は6カ月で回収しています。

この場合

A社の年間投資効率は10%×4回転=40%と算出します。
B社の年間投資効率は10%×2回転=20%と算出します。

A社の方は300万円使って、120万円の利益をあげています。
B社の方は600万円使って120万円の利益をあげています。

よって、A社の方が投資効率はよく、B社とくらべて使う投資額が300万円も少ないのですから、その金額を他の投資へ使えばさらに利益はあがられることになります。

上の計算の4回転(A社)と2回転(B社)の意味を少し説明しておきます。

A社は、売掛金を3カ月で回収するので常に3か月分の売掛金残高を保有しています。

よって、売掛金(投資)が発生し回収をして、またそれを投資して回収して、またそれを投資して回収して・・というように年間4回繰り返します。
(12か月÷3カ月=4回転)

B社は、売掛金を6カ月で回収するので常に6カ月分の売掛金残高を保有しています。

よって、売掛金(投資)が発生し回収して、またそれを投資して回収します。

B社の場合はこれで1年が過ぎてしまい2回転(12か月÷6カ月=2回転)しかしません。

 

もうひとつ例をあげてみます

C社の売上が毎月100万円で利益率が10%とします。
売掛金回収期間は1か月とします。

D社の売上は毎月100万円で利益率が30%とします。
売掛金の回収期間は4カ月とします。

 

C社
年間売上高 1,200万円
年間利益   120万円
利益率   10%
売掛金回収 1か月(=年間12回転)
常時売掛金残高 100万円
投資効率 120%

 

D社

年間売上高 1,200万円
年間利益  360万円
利益率   30%
売掛金回収 4カ月(=年間3回転)
常時売掛金残高 400万円
投資効率  90%

 

D社の方がC社よりも利益率は高いですが、投資効率ではC社の方が高いです。
この投資効率は次のように計算します。

投資効率=利益率×売掛金回転数

C社投資効率=10%×12回転=120%
D社投資効率=30%×3回転= 90%

C社は100万円を使って年間120万円を稼いでいる
D社は400万円を使って年間360万円を稼いでいる

 

利益額だけで見れば、D社の方が多く稼いでいます。

しかし、C社はD社と比較して300万円投資額が少ないので、それをD社の投資効率90%を上回る他の投資に回せるのであれば、トータルでC社の方が利益額は多くなります。

利益額を重要点として、投資効率は悪くても利益をなるべく多くとりにいくか、投資効率を重要点として、少ない投資資金で利益を最大化することを考えるかは会社の経営判断になります。

しかし、どちらの戦略にしても使える資金でできるだけ多くの利益を取りに行くことは共通ですので、商売においても投資効率を考えることは重要です。

重要なお客様の判断基準としては、売上高の大きさのみで考えるのではなく
利益率、債権回転期間も含めた投資効率で見ることも必要です。

 

実際に負担する資金を投資額と考える

ここで感のよい方は疑問に思ったかと思います。
債務の期間はどう考えたらよいのか?と。。

これまで投資効率を説明するにあたり、わかりやすいように債権回転期間のみで説明しました。債権回転期間というのは販売してから回収までの期間をいいます。

しかし、実際に投資効率を判断するのは債権回転期間から債務回転期間を引いた期間で計算する必要があります。
なぜなら、その期間が実際に資金を負担していることになるからです。
この資金負担額を投資額とみなして計算します。

計算式は次のようになります。

投資効率=利益率×  (  12カ月 /(債権回転期間−債務回転期間))

たとえば、利益率30%の商品を仕入れて販売するとします。

販売から回収まで4カ月かかり、支払は仕入から1カ月後とした場合、債権回転期間は4カ月、債務回転期間は1カ月となります。

実際に資金を負担するのは3カ月ですので投資効率は次のようになります。

投資効率=30%×  (  12カ月 / 3カ月 )= 120%

もしも、債務回転期間が債権回転期間よりも長い場合には、たとえ利益率が小さくても投資する価値はあります。
資金負担がなく利益があげられるのですから。。